第2081話 ■なぜ「再生」にこだわるのか?

 地方などの衰退状況を改善するような試みが全国各地で行われている。「昔はよかった。にぎわっていた」という考えがきっとその中に残っているのだろう。そのプロジェクトの名前や方針に「再生」という言葉が使われることが多いような気がする。この言葉を目にする度に、私はある種の失敗を予感する。

 元の活況を取り戻すという意味かもしれないが、もしうまく活性化できたとしても、元の活況と新たな環境とは事情が全く違う。文字どおりの「再生」などはあり得ない。何も語彙の解釈で言葉遊びをしているつもりはない。「再生」なんかあり得ずに、新たな活況を生み出す、ことに全集中すべきだ。

 「昔はよかった」に終始してしまうと、現況に対する正しい分析ができない。客観的を装いながら、他責なことばっかりを挙げてしまう。しかし、周りの変化に対して、自らが変化できかったことが最大の原因だったりする。他責の部分は変化の要素の一つでしかなく、きっかけではあるが、その対応が十分でなかったと、真摯に向き合わなければならない。それからようやく新たなビジョンの検討がスタートできる。

 最近気になるのは、どこの地方都市も同じような作りになってしまっていることだ。全国的に知られているチェーン店の看板が並んでいる安心感はあるが、その土地特有のものが次第になくなっているような気がする。インバウンドや観光客をあてにする脆さを思い知らされている昨今ではあるが、このことに対する不安は以前からも感じていた。地元の人からの支持を得られず、集客や売上が減少しているとしたら、まずはそこにテコ入れを行うべきだ。元に戻すのではなく、新たなビジョンを描いて検討するべき。

(秀)