第1047話 ■エレベーターの話

 通りすがりに自動車のショールームの模様替えのシーンを目撃した。「どこから入れたんだろう?」という展示車両への疑問は以前から感じたことはあるが、そのショールームはさらに地上階ではなかったのでその舞台裏には興味を誘われた。当然と言えば当然だが、地上階でないところに車を運ぶとなるとそれはエレベータを利用するしかない。壁が観音開きに大きく開け放たれ、そこに巨大なエレベーターが隠されていた。壁のこんなところが隠し扉になっていたとは?!。年に何度使うか分からないがやはり専用のエレベーターが用意されており、その出口は裏側の道路に面したところに繋がっているはずだ。エンジンは掛けずに数人でゴロゴロとエレベーターの方へ車を押していた。

 そう言えば、スタジオにも同じようなでかいエレベーターがあったなあ。一言にスタジオと言っても大きいものから小さいものまで様々。たまたま、会社での販促ビデオの作成で使ったスタジオは思ったよりもでかかった。気が付いたら、制作費もでかくなっていた。自動車を持ち込んでカタログなどの撮影もできるスタジオらしい。テレビの賞品でスタジオに持ち込まれた自動車はこんな感じで入れているんだなあ、と思った。

 でかいエレベーターと言えば、国会議事堂近くにある、ドコモの本社が入っているビルのエレベーターは人用ながら異様なほどのでかさだった。定員は100人らしい。それこそ、ちょっとした部屋よりも広い。自分で階を指定したり、「閉」ボタンを押したりすることはない。「あと○分で出発します」みたいなメッセージが箱の中の画面に表示され、出発を待つ。そしてそのエレベーターは一気にドコモ本社の受付階まで直行する。そして指定階へは受付を経て、普通のエレベータに乗り換えて移動する。

 この他で面白かったのは2階建てエレベーター。六本木のあるコンピュータ会社のビルにある。指定階に移動する際、その指定階が奇数階か偶数階かで、ロビーから左右に分かれて丁度半階分、階段を登るか下りるかして、そのエレベーターの乗り口に向かう。例えば自分が奇数階用に乗った場合、階指定のボタンは奇数階のものしかない。そして、奇数階用の箱の上には偶数階専用の箱が一体となって乗っている。そしてこの2階分のエレベーターは2階分ずつ移動して指定された階に止まっていく。最初はこのエレベーターの構造がよく分からず、止まるのに扉が開かないのが不思議に思えた。奇数階の箱に乗っていてその箱の人は乗り降りしないが、遇数階の箱でだけ人の乗り降りがあればこんな感じになる。「開」ボタンを押し続けていれば、2つの箱の乗員に迷惑を掛けることになる。確かに面白いが、世の中にそれほど存在しないのは、不便だからなのだろう。朝の始業時間間際はきっと大変なんだろうな。

(秀)