第1048話 ■教祖は花子

 今年もまた、日本テレビの「24時間テレビ」が放送された。これが終わると、本当に夏休みも、もうすぐ終わってしまう。かつては毎年そう思った。私が小学六年生のときに第1回目の放送があったことをはっきりと覚えている。26回目の放送と言うことは、25年前だったことになる。そもそもの番組のコンセプトやポリシーは一貫して変わっていないのだろうから、冷ややかに私の受け止め方が変わったと言うことは、私が変わったということだろう?。

 今年はちょっと見てみた。この番組にはものすごい魔力がある。それは集団催眠と似ている。まるで山田花子を教祖とした宗教のようだ。そして今回の司祭はTOKIO。ということは、初代の教祖は萩本欽一か?(歴代の教祖という表現は変だが)。「愛は地球を救う」という宗旨の下、周りから見れば特異な宗教団体とどこか似ている。見ていると批判することに躊躇するくらい。

 山田花子は走った。普通は100キロだったところを彼女は110キロ走った。何とも半端なその10キロが何故足されたのかは知らない。ところがそのせいで彼女は放送終了の9時までに武道館にたどり着くことなく、武道館から5キロちょっと前の場所で本放送はエンディングを向かえた。会場では教祖不在のまま、例の如く「サライ」の合唱が始まった。放送終了直前、徳光が叫んだ。「山田花子さんのゴールの模様はこのあと、10時から放送します」と。やがて、番組は終了し、何事もなかったかのように、9時から次の番組が始まった。

 そして10時から走りつづける山田花子の姿が再びテレビに映った。画面には10時から放送予定の番組を10分間遅らせる旨のテロップが出た。それと生放送であることを示す、「LIVE」の文字。そしてその直後、放送開始から1分ぐらいで彼女はゴールイン。そこでは黄色い衣装で揃えた信者達が教祖の到着を拍手と歓声で出迎えた。あまりものタイミングの良さに気味が悪くなった。残りの5キロちょっとを走るに1時間は要していないだろう。会場数百メートルのところまで来ていて、時間調整のため休憩を行い、10時からの放送開始数秒前から、残りの数百メートルを走り出したのではなかろうか?。

 そして、募金という名のお布施。

(秀)