第1049話 ■マックの緊張感

 日本マクドナルドが創業者親子を追い出してから雰囲気がちょっと変わったように見える。良く言えば、果敢に挑戦している感じ。悪く言うとすれば、今までのやり方を否定するために、闇雲に新しいことに挑戦している感じ。そのいずれであったかは、暫く後に彼らが利益回復を果たせたかどうかで答が出ることだろう。いろいろと新製品を出してくれることよりも、月見バーガーやグラタンコロッケバーガーをいつでも買える定番メニューにしてもらった方が個人的には何倍もうれしいが。

 さて、店頭での新サービス(?)「60秒チャレンジ」について。昼食の最も店が混雑する時間帯にオーダーを受けてから商品を出し終えるまで、60秒でやろうというサービスである。もし60秒内にこれが出来なかった場合は次回以降利用出来る、ポテトSまたはジュースSと交換できるチケットが貰える。この時間帯は店員にも緊張感があり、機敏な彼らの動きは心地良くもある。ところがこのサービス時間が終わる13時を境に彼らの緊張感は氷解し、商品が出て来るタイミングが途端に悪くなる。この落差に逆に不快感すらこみ上げて来る。

 おまけにピーク時間を過ぎた後はレジの稼動数も減らしてしまっていて、余計に待たされる時間が増す。ここでちょっと悪知恵が働いた。店の責任者として60秒以内に商品が出せずにチケットを出すくらいなら、稼動レジを絞り込んでしまおうと私なら思う。通常5つのレジがあるとすればそれを4つにする。そうなると、カウンターにたどり着いた客に対して商品を出す時間は好転し、ペナルティのチケットを出す確率も低くなる。表向き、60秒以内に商品を出すことを守ったことになる。

 ところが客の方はカウンターの処理能力が落ちた分、入店してからの待ち時間は長くなってしまう。まさかピークの最中にこんなインチキをやっていようとは思えないが、チャレンジタイムの終了間際になると稼動レジを半分に絞り込んでいる店があった。このため各窓口に3人ずつくらいの列ができてしまっている。やがてある店員が「チャレンジタイム終了です」と声を発した。私は列の3番目の位置に並んだ状態で自分の電波時計を見る。まだ13時には1分少々前だった。しかし、店の時計は13時を3分過ぎようとしていた。

 まさにこれがマクドナルドの緊張感だ。勢い良く価格攻勢で他の競合を圧倒しても、自らの利益率を大きく犠牲にしている。どこかチグハグだ。「チャレンジ60秒」は非常に良い試みだと思うが、その反動がその時間終了後に現れ、少なくない客に不快感を与えていることに、彼らは果たして気が付いているのだろうか?。

(秀)