第1055話 ■感じやすい女(4)
何事もなかったかのように眠りつづける妻の横で、私はまんじりともできず、そうしていたら空が徐々に白んできていた。
一人で外に出てみると、あの地震の規模で余震がなかったのが不思議なくらいだが、周りは直後からはだいぶ静寂を取り戻していた。作りがあまいブロック塀が倒れていた。その横に置いてあった車が傷ついている。コンビニにもシャッターが降りていて、営業どころではなさそうだ。何かを買いに来ていて、そのシャッターを叩いている人がいる。道路には異常は見られないが、信号機は動いていない。
家に戻る。電気はつかない。水は最初は普通に出ていたが、次第に水圧が衰えてしまった。タンクの中が尽きてしまったのだろう。冷蔵庫の扉に手を掛け、すぐに手を止めた。まだ中の冷気は保たれたままかもしれないが、この日のためにほとんど空にしてしまっていた。起き抜けにビールでもあるまい。
「おはよう」妻がようやく目を覚まし、寝室からやってきた。
「おはよう。何かすごいことになったね。テレビも点かないし、新聞も来ていない」
「ねえ、今何時くらいかしら?」電池で動く時計が壁から落ちてしまい、電池が外れてしまっていた。
「6時7分」携帯電話の時計を見て言った。
ふと通勤時に使用している携帯ラジオのことを思い出し、ヘッドフォンを妻と一方ずつ耳にあてた。
「震度6強。新幹線、在来線、私鉄線、地下鉄ともに全部運休。空港は封鎖。都内のほとんどは停電に断水。震源地は東京湾直下。マグニチュードは…..」
全国的にはどんな感じで伝えられているのだろうか?。田舎の両親からも電話が掛かってこないところからすると、どこかで電話線も切れていることだろう。それとも混雑のための規制のせいか。
「どうやら今日も休みみたいだ。これじゃ、会社にも行けない」
− つづく −
(もちろん、フィクション)
(秀)
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