第1075話 ■80%

 80%というのは実に気持ちの良い数字だ。ものごとをやり遂げていく過程で、この80%までは比較的容易にたどり着ける。しかしここから先の20%の詰めの作業がそれまで80%のために費やした以上のエネルギーや時間を要してしまうこともざら。そのまま80%の達成度で放り出せればこれこそ嬉しいことはない。よって私は80%という数字にそんな気持ち良さを感じる。

 例えば夏休みの宿題。最初の2、3日でできるだけのものを片付けようと思えば80%近くを片付けることができた。しかし、残りの宿題は遅々として進捗しない。理由は簡単。面倒なものは先送りしているからに過ぎない。読書感想文なんていうのはその典型例だろう。

 例えばコンピュータプログラムの開発。大まかに必要要件を抑えて全ての機能が正しく動くようになったから80%できたと思ったら大間違い。確かに完成度としては80%かもしれないが、そこから先のデバッグという作業がこれまでよりも長いのが普通のこと。プログラムの完成度を高めるための作業がそのままプログラム構造の複雑化になる。修正のための難易度は上がるし、一ヶ所の修正が同様の部分全てに及ぶ。また、あるところを修正したために、あるところを壊してしまうこともしばしば。

 例えば文章を書くこと。一旦書き上げて、何度か読み直してみる。誤字脱字のチェック。「てにをは」の確認。それに私の場合は読んでみてのリズム感を確認する。過去形の文末が続くと良くないので、時勢を無視して敢えて現在形の表現に変えてみたりする。それでもまずいままの文章だったと後から気付くとしきり。別に80%が気持ち良いからではないが、そこから同じくらいの時間を掛けて推敲していたら、コラムの配信が半分になるどころか、一つも書き上がらないような気もする。

(秀)