第1149話 ■ペッパー警部

 久しぶりに二次会まで行ったら、そのカラオケの席で「ペッパー警部」を歌って踊るはめになった。我ながら、気さくな課長代理なこと。別にいつもやっているわけではない。それでも指名が来たときには、歌って踊れるもんだと思っていた。

 歌の方は問題ない。歌詞を見るまでもなく、1番ならちゃんと歌える。ところが振り付けがところどころ怪しい。大まかなポイントとなる箇所の動きは分かっているものの、その途中で振りが分からない所がある。別に酔っていたせいではなく、しらふでもその部分は思い出せなかった。

 家に帰って家人に聞いてみると、私よりは覚えているものの、完璧ではない。かつては「ピンクレディーの曲を教室で振り付きで歌っていた」(家人談)はずなのに、記憶とはこんなもんだ。「UFO」ならちゃんと踊れそうな気がする。

 確かにこの頃は家庭用ビデオというものはなく、何度も繰り返し見て覚えるには、テレビに張り付くしかなかった。翌日、教室の後ろの方で女子が振りのレビューをやっていた。家庭用ビデオが普及して振りを覚えるようになったのは、マイケルジャクソンの「スリラー」の時代になってからではなかろうか?。

 雑誌に写真と図解でピンクレディーの曲の振り付けを紹介しているページがあった。それと家人の話によると、カード式でパラパラ漫画の要領で振り付けを見る付録というのもあったらしい。

 それにしても不思議なものだ。仮にも「警部」である。そこそこ偉いのだ。だから、交番の警官のように制服でやって来て、「もしもし君達帰りなさい」と言うはずなどない。さらに、そもそもその人がペッパー警部であると、なんで分かるんだろうか?。名札付けた警官はいないだろうし、それにペッパーだよ、ペッパー。「太陽にほえろ」でもなかろうに。年の頃はもう定年か?。ならこの追跡も時効にしておこう。

(秀)