第1155話 ■ドラマ初回の設定手法

 またいつものように当クールのドラマの初回分が放送される時期だ。最近のドラマはかつてのホームドラマと比較すると、初回放送分の重要性が増しているような気がする。初回を見逃してしまうと登場人物の相関が全く分からなくなってしまう。なぜならこの初回放送分(または2回目まで)でドラマを展開させる環境が整うからである。

 言葉を変えると初回放送分で主たる登場人物が出会う、ということになる。引っ越して来たり、転校して来たり、新しい職場に移ったり、ちょっとした偶然で知り合ったり、などなど。主に主演者の環境が新たなスタートを切るタイミングでの出会いがドラマのスタートとなるのが昨今のパターンとして多い。しかも、いきなり困難な状況に見舞われ、そこから回復していく様が順次描かれるようになる。

 それに比べ、ホームドラマにはそんな当初の環境の変化などまずない。初回に登場人物がナレーションなどで紹介されたりするが、家族と慣れ親しんだご近所との話が中心。敢えて言うと、住み込みのお手伝いさん(浅田美代子や岸本加世子)がやってくる程度で、彼女たちは主演女優ではありえない。あくまでも日常の繰り返しがベースとなっている。その日常の中でわずかなトラブルが発生し、その日の放送分でほぼ解決することになる。

 環境を変え、整えることでドラマをスタートさせることはある種、やりやすいことだ。環境の変化と劇的な出会い。それが最近のドラマの手法となっている。しかし、そうそう我々の身の回りでそんな環境の変化が起こりつづけることはない。そんな中、人々は環境の変化と劇的な出会いを待ちわびている、ということなのだろう。

(秀)