第1183話 ■値引き交渉

 基本的に値引き交渉というのが嫌いだ。例外的に車を買うときにはいろいろと策を弄し値引き交渉をするが、それは実売価格が提示されていないため、「いくらですか?」という問いの延長ぐらいに考えている。それに対し、店で表示されている価格に対して、「もっと安くなりませんか?」と言うのには抵抗を感じる。

 値札に×を付けて「さらにお安くします」というのも姑息で嫌いだ。それならズバリの金額を書け、と思う。それでいて期待だけさせておいて、その実、あまり安くなかったりする。値引き交渉が下手な場合は高い買い物をさせられる可能性が潜んでいるのも安心して買い物ができない。

 以前私が好きだった中古カメラ店があって、そこでは一切値引き交渉に応じなかった。中古カメラだから個々に値段があって、状態によって差がついている。そこで、「もう少し安くなりませんか?」と言おうものなら、キッパリと断られ、それでもゴネようとすると、客の手元に並べたカメラをショーケースに片付け、店員はさっさと接客を止めてしまう。そんなシーンを何度か目撃した。

 その店は駅からちょっと不便なこともあってか、他の店に比べると1~2割は安かった。値付けに自信があるから、値引き要求に対しても頑なに「ノー」と言う。それはプロフェッショナルの仕事である。値段の面で安心して買い物ができるというのも大事な品質の一部だと思う。

(秀)