第765話 ■甘納豆

 私と甘納豆の出会いは駄菓子屋のくじ。詰め合わせになってデパートの地下あたりでも売ってそうな、ちょっと高級感のある感じの甘納豆であるが、かなり卑近な出会いである。逆に高級な甘納豆とは縁がない。そのくじというのは、一袋10円で、紙袋に甘納豆が20粒ほど入っている。おばちゃんに10円払って、厚紙に貼られたその袋を1つもぎり取り、急いで袋の中の紙切れを探す。赤い袋で、正面に顔のイラスト書かれていた。あいにく、そのイラストの詳細は失念。

 当たりだと袋の中に1センチ×2センチ程度の紙が入っていて、それに等数が記されている。スカの場合は豆以外なにも入っていない。当たりの確率は10パーセントくらいか。特等から1等、2等、3等とまであって、その賞品は同じ厚紙に貼りつけられている大きな袋だ。中身はもちろん甘納豆。袋がでかい分、中身も多い。それに、特等の場合はおまけにおもちゃ(ちんけな駄玩具だが)も付いて来る。

 その後何度か探してみたことがあるが、東京近郊ではついにこの甘納豆くじにはお目に掛かれていない。私が生まれ育った地元でも現存しているのかどうか?、いつも通っていた駄菓子屋も無くなってしまい、確認できていない。同じ様なもので、麦チョコ版のものが売られているらしいことを本で見たことがある。甘納豆に比べるとずいぶんチープな気がする。

 何袋か買って、パラパラと豆を一つの袋にまとめる。すべてがスカだとちょっと残念だけど、単に射幸心だけでなく、純粋に甘納豆が食いたくて買っていたようだ。だから今は、スーパーで買ってきた甘納豆を摘みながら書いている。

(秀)