第1232話 ■がんばっていきまっしょい

 今クールはかつて映画となった作品のドラマ化が多いのが目に付く。「電車男」、「いま、会いにいきます」、「海猿」、それに「がんばっていきまっしょい」。これまでの観察によると映画からドラマであれ、逆のドラマから映画であれ、先発の話題性に乗じて後発ができるわけで、この仕組みから言って、後発が先発に対して物足りなく思えるのは、ある種当然のことかもしれない。まあ、例外の1つとしてすぐ思いつくのは「踊る大捜査線」くらいしかない。(「室井慎二」はつまんなかったが)

 ドラマ「がんばっていきまっしょい」を見て、面白いと思った人(つまんないと思った人でも)は是非、映画版「がんばっていきまっしょい」を見るべきだ。ドラマ版のような笑いはないが、真剣さがまったく違う。姉と同じ進学校に進学したものの、明確な目標もないため、入学前後から進学によるうれしさよりも閉塞感におそわれる。それに周りからは何かと優秀だった姉と自分が比べられてしまう。そんなときに見つけた一筋の光明としてのボート。それにしがみつく主人公悦子。田中麗奈演じるこの悦子の素朴さ、実直さがリアルに描かれている。ボートのレースのときには一緒にドキドキハラハラするし、負ければ同様にくやしいと感じてしまう。

 映画版の登場人物の中でキーとなるのは中島朋子演じるコーチである。ドラマの石田ゆり子演じるそれとはちょっと違う。中島のコーチはやる気がないのだ。そのやる気なさ加減と女子ボート部員の一生懸命さとが噛み合わないところにこの映画の味がある。彼女の存在がなければこの映画は味気ないものになったに違いない。監督の演出の上手さか、中島のキャラクターなのかは分からない。文字でこの雰囲気を伝えることは甚だ難しい。けど、これが良いんだ。

(秀)