第1250話 ■大停電の夜に

 話題のこの作品も、行こうと思っていたシネコンでの上映が最終日(他ではまだやっているようだが)とあって、金曜日の夜のレイトショーに車を走らせた。車をかっ飛ばして約10分のところにあるシネコンは最近私のお気に入りである。駐車場はタダだし、劇場内は傾斜がちょうどいい具合についていて、前の人の頭が気になることもない。ついでに20時以降のレイトショーは1,200円というのも嬉しい。

 さて、映画の方だが、主たる登場人物が12人いる。基本的に彼らが2人ずつの設定で話が始まり、その途中で停電に見舞われる。停電とは日常の中の非日常である。もっと街はパニックになって良さそうだが、意外にも平静を保っている。この12人のストーリーが後半に掛けてどう絡んでいくのかを期待させるような前半部分であった。

 停電のときにエレベーターに閉じ込められた2人。出生の秘密を知らされたサラリーマンやそれにまつわる過去を知らされた者。離婚の危機にある夫婦。出所後かつての恋人との再会、彼女の出産。そして主な舞台となるジャズバーのマスターと向かいのキャンドルショップの店員。彼らにはそれぞれの日常があり、非日常の中、偶然と接点を持って出会う。

 気が付いたら映画が終わっていた。面白かったからではなく、結末が不十分な形で終わってしまったのだ。刑事ドラマで言えば、犯人が逮捕されないままエンディングを迎えたようなもの。そもそも12人という登場人物が多すぎたと思う。同時進行のオムニバス映画のような試みかと期待したが、それらの絡みが中途半端で、全く絡んでいないものもあるし、そのストーリーがなくなっても全体の構成には影響のない話もあった。ストーリーが多くなりすぎたために、登場人物のプロフィールの描写も中途半端だった。

 きちんとした終わりのない、ちらかしたままの放置映画と言えよう。続編「大停電の後に」でもなければ、収まりがつかない。結局夜が明け、電気が復活したところで話は終わる。結局この映画は何を言いたかったのか全く分からなかった。

(秀)