第1305話 ■写楽
浮世絵の謎の巨匠は「しゃらく」だが、ここで取り上げるのは「しゃがく」である。80年代の写真雑誌だ。この雑誌の創刊当時、私は中学生で、趣味で写真を嗜んでた頃である。新たなスタイルの写真雑誌として創刊されたこの雑誌をほぼ毎月のように買っていた。390円といった価格も中学生には嬉しかった。しかし、それ以上にちょっとHな写真を写真芸術の名の下に見ることができたことがもっと嬉しかった。
この雑誌に限らず、いろいろと中学生から大学生の頃ぐらいまで雑誌を買い集めていた。実家に帰った際に、それらを発掘してみようかと思ったが、あいにく私が家を出た後に実家は引越しを行い、「捨ててないよ」と母が言うものの、それらを見つけ出すには至っていない。そんな発掘よりも旨いものを食べ歩いたり、友達と会うのが優先だし。
神田の古本屋街を歩いた際に、自分が持っていた雑誌類が結構な値段で売られているを見た。写楽は1,500円。何とか安いものを探し出してようやく500円。2冊買って帰る。それから何度かそんなことを繰り返した。5年くらい前の話。それが今ではネットオークションで安く買えるようになった。こうして私の写楽のコレクションは30冊を超えた。しかし、かつて月々買っていた量には及ばない。
この雑誌の面白いところは写真そのものもそうだが、紙面が世相を意識した構成であった点も良かった。田舎に住んでいた私は、これにより時代の先端を感じていた。そしてまた広告も今となっては非常に面白い。車やオーディオ機器の広告が多い。時代を感じる。オーディオ機器がシステムで30万円とはちょっと今では考えられない。CDプレーヤーもそれだけで今ではコンポが買えるほどの金額ときている。
改めて収集してみると、後半はほとんど買っていなかったことに気が付く。他の雑誌に気が移っていたかもしれない。そして今回、この雑誌の最終号を入手した。’86年2月号。休刊と言っているが、早それから20年超。世にあまたあるように休刊という名の廃刊である。最終ページの編集長の挨拶でこの写楽というネーミングが”音を楽しむように写真を楽しむ”という意味であることを知った。確かにこのあたりになると創刊当初の面白さというかパワーが減衰してしまっている。
またこんな感じの雑誌が出ないかなー、という気持ちが私が今もこの雑誌をちまちまと集めている理由でもある。
(秀)
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