第1381話 ■根多帳

 古典落語の噺というのは全部で500話くらいあるらしい。それが総括的な資料としてまとめられているわけでもなかろうから、実際の数字ははっきりしない。これに新作落語が加わると余計にその数は分からなくなる。二ツ目から真打になるための条件に100話の噺を身に付ける必要があるらしい。

 そんな噺家の人々は自分が演じた演目を根多(ネタ)帳に記録しているようだ。日付と場所と一緒に。楽屋でその根多帳をめくりながら、過去の演目などからその日の演目を決めるらしい。歌丸師匠はそうやっていた。

 さてさて、雑文家の私も改めて毎日コラムを書くようになってから、ネタ帳をつける様にした。それ以前は、ネタが思いついたときにだけ書いていたので、不定期になってしまった。こんなスタイルを毎日続けていたら、パソコンを前に連日うんうんうなっていなくてはならない。そもそも日々思いついたネタもしばらくすると忘れてしまっている。

 私のネタ帳はPDA(電子手帳)だ。仕事でもスケジュール管理等に使用しているので、ほぼ常時携帯しているか手元においてある。ネタを思いついたらこれに、即時記録する。電車等での移動中ももちろんだ。これにネタのタイトルとキーワードを記録していく。そして場合によってはざっと書き始めるときもある。

 毎日コラムを書くときに、このネタリストからタイミングや書き易さから、その日のネタを決める。もちろん、時事ネタが緊急である場合はその限りでない。ネタの糸口は他人との会話であることが多い。一週間分のストックがあると、その週は気が楽で良いのだが、なかなかそうはいかないもんだ。

(秀)