第1406話 ■キリスト誕生

 私は幼稚園ではなく、保育園に通っていたが、都合3年保育の間に定員の調整とやらで、途中転園を経験し、最後の1年をキリスト教の保育園に通った。市立の保育園ながら、キリスト教という、ある種珍しい保育園だったと思う。毎朝欠かさず「礼拝」の時間というのがある。園内に祭壇やキリスト像があったり、拝むことを強要するようなことは一切ないが、礼拝の時間に聖書の話を聞かされることは日課とされていた。

 そしてクリスマスが近づくと「キリスト誕生」の劇を年長組の私たちはやらされた。キリストがクリスマスに馬小屋で誕生する話だ。私はこのとき博士の役をもらい、歌を歌った後、ちょっとした台詞があった。その夜、異様に星が輝いていて、「何かあったんだ」、「キリスト様が生まれたんだ」とかいう感じだった。悲しいかな、馬小屋にいる馬という役の友達もいて、馬Aの台詞が「ヒヒーン、ぼくは馬です」というやつで、馬Bは「ヒヒーン、ぼくも馬です」だった。もちろん、頭の上に馬の顔の作りものを載せている。

 ただ、この芝居は保護者などに公開されるでもなく、こぢんまりとクリスマス集会とやらで、子供たちと先生が鑑賞するだけのものだった。聞いたところによると、キリスト教の幼稚園でもこの手の芝居は定番ものとして行われているらしい。今も多くの幼稚園で行われているに違いない。

(秀)