第1450話 ■今さらの「タイガー&ドラゴン」

 私が落語好きになってから、まだ1年にも満たないが、そもそものそのきっかけはドラマ「タイガー&ドラゴン」にあったし、実際に寄席通いを始めたきっかけは映画「しゃべれども しゃべれでも」だった。さて、この「タイガー&ドラゴン」だが、これは脚本を宮藤官九郎が書いて、長瀬智也と岡田准一が出演した落語のドラマで、2005年の新春のスペシャルドラマとして放送され、好評により、同年4月から1クールレギュラー放送された。

 このドラマの再放送を昨秋録画し、今頃見ているが、当時では気がつかなかった、落語好きになったからこそ楽しめる再発見があって面白い。まず、演芸場だが、外観は浅草演芸ホールをそのまま使用しているが、中のシーンはセットで作られていて、それは新宿末廣亭を一回り小さくしたような作りになっている。客席の両端が桟敷席になっているし、舞台に床の間があるなど、模しているが、舞台の左右の配置は末廣亭のそれと逆になっている。以前はそんなこと気づくわけがない。

 また、楽屋のシーンもセットだろうが、そこに掲示されている「二ツ目昇進」の告知に注目。あまり細かなところまでは判別できないが、理事会で4月からの二ツ目昇進者が決定したことを記載しているが、その噺家の名前が実在の噺家なのである。その噺家の名前から判断するに、それは落語協会の掲示物のようだ。ただ、微妙に時期がずれていて、2005年の4月に落語協会は本来の昇進を行っていないし、名前が書かれている実在の噺家は前年の11月に昇進していた。

 東京には大きく落語協会と落語芸術協会という2つの団体があり、プロ野球で言えばセ・リーグとパ・リーグみたいな関係にある。そして上野鈴本演芸場を除き、他の常打ちの演芸場では両団体が10日サイクルで交互に出演している。ドラマに出てくる西田敏行演じる、どん兵衛師匠およびその一門はいつも浅草演芸ホールの高座にしか出ていないが、その演芸場に出ているどん兵衛師匠ののぼりと同時に出演している他の師匠たちののぼりを見て、どん兵衛師匠は落語芸術協会に所属していると判断できる。

 こんな感じで設定や背景が分かれば、よりドラマが楽しめるという実例である。もし興味がわいた方はレンタルででも確認されたし。

(秀)