第1478話 ■裁判傍聴2008春(1)

 春は色々と新しいことが始めるシーズン。新入学に就職と新たなスタートを切った人も多いと思う。また人事異動や転勤というのもこの季節にはつき物だ。裁判所にももちろん人事異動があり、この日私が傍聴に行った地方裁判所の支部にも新たな裁判官が登場していた。何と若い女性。見た目では20歳代後半に見える。この日私は終日裁判所にいて、合計7件の刑事事件の公判を傍聴した。ただ今回残念だったのはいずれもこの日には判決が出ず、やや悶々とした形での結末となった。

 ちょっと最近の世相に合わせて社会的問題になっている事案について報告したい。まず1つ目は、道路交通法違反。被告人は30歳代男性。既に勾留を解かれていて、手錠や警察官の同伴はない。無免許で酒気帯び運転を行ったところ、踏み切りで一時停止しなかったために警察に検挙された。世間的にいくら批判が高まろうとも、飲酒運転や酒気帯び運転は依然多いと推測される。テレビの「警察24時」なんて番組でも、運が悪かったぐらいにしか伝わってこない。それが無免許と合わさるとこうして起訴され、本裁判に掛けられる。

 無免許なのは以前免許取り消しになって、そのまま免許を取っていなかったためで、その間、捕まった1回を除いて運転は一切していなかったという。しかも妻の不在時に子どもの発熱に気付いて、やむを得ず運転したと言っている。求刑は懲役4月(ヨンゲツと読む)。1回公判で即日結審して終了した。次回判決公判。前科前歴もないため、執行猶予が付くのは間違いないだろう。けど、「見つからなければ良いだろう」がこれほどの扱いを受けるとは、被告人には十分なお灸になったことだろう。

 続いては、DV(ドメスティックバイオレンス:家庭内暴力)の事件。罪名および罰状としては傷害罪で起訴されている。開廷に先立ち、被告人の入場。ガタイの良い、30歳代後半位の強面が現れた。この公判は継続審議であるため、被告人のプロフィールや事件の全貌が分からない。ただ、話が進むにつれて次のようなことが分かった。被告人は傷害などで前科三犯。離婚した妻との間に2人の子どもがいて、事件までは被告人の両親が面倒をみていた。今回、長子の顔面を殴打し、逮捕起訴されているが、「しつけ」の名の下、子どもへの暴力は日常化していた。既に子ども達は児童相談所によって、被告人宅から隔離されている。

 この被告人、ちょっとおかしい。両親に対し、子ども達を会わせられなくなったことを詫びているが、そもそも自分が犯罪者として世間や家族、とりわけ親に心配や迷惑をかけたことに気が付いていない。子ども達に対する感情については、「これまでと環境が変わって、友達できているかな」などとそうなったことを詫びてはいるが、そもそも自分が暴力を与えていたことを詫びてはいない。加えて、今後自分が子ども達の親権者になりたいと発言している。

 求刑は懲役1年6月。起訴された直接の事件が加療数日の割には非常に厳しい内容といえるが、暴力が日常化していたことや前科前歴から判断するに、この程度の求刑となるのも頷ける。再犯の可能性は極めて高いと私は思う。

(秀)