第1480話 ■裁判傍聴2008春(3)

 どうやら犯行を否認しているらしい裁判に遭遇した。継続公判であるため、事件の全貌は分からないが、廊下に掲示されている裁判の予定表によると、窃盗と覚せい剤で起訴されていて、その日は検察側の証人尋問が行われた。

 開廷直後、証人が入場してくるが、ここで証言台とそこまでの経路に遮蔽が施された。被害者?、と思ったが目撃者だった。その風貌や様子は壁の向こうで一切分からない。被告人に対し不利な発言をするため、被告人からも姿が見えないように遮られている。被告人が恨みを持って、証人に危害を加えることがないようにとの配慮のようだ。だったら、検察官や裁判官への配慮はどうなるの?。

 今回は車上荒らしの現場を目撃したということでの証言だった。証人は自分の車の中から、被告人が被害車両からカーナビらしいものを取り外し、車外に持ち出したところを見たと証言した。しかし、その証言が終わった後の弁護人からの反対尋問でこの証言が揺らいでくる。「その車の中で目撃した人物は何をしていましたか?」、「その車の中の人物の手元が見えましたか?」、「その瞬間を見ましたか?」。

 そうなってくると、徐々に自信が揺らいでくるようだ。目撃した人物の頭部の陰でその手元は見えていなかった、という証言に落ち着いた。さらに反対尋問は続く。「パトカーが来たのは何時頃でしたか?」、「パトカーは何台来ましたか?」。そんなことは証人に聞くまでもなく、警察の方で正確な情報は入手できるはずだが、敢えて証人に聞く。証言全体の記憶がどれくらい正確なのか、あやふやなのかを確認したい様だ。

 証人としては善意で仕事も休んでまで出廷し、証言しているにも関わらず、弁護人の反対尋問で不快になるような追及を受ける。人によっては怒り出す人もいると思う。恐るべき弁護人。否認事件はおもしろい。

 とりあえず、今回の傍聴シリーズはここまで。

(秀)