第1566話 ■角界の顛末

 「弟子の犯罪は親方の責任」というのが私にはどうにも解せない。別に組織的な犯行ではなく、個人の責任でしかないことで、何で親方が責任を負わねばならないのか?。これがもし他のスポーツだったら、例えばプロ野球だったら、監督は辞任するのか?、サッカーだったら?。また、これまでも多くの芸能人が大麻や覚せい剤で検挙されてきたが、事務所が容疑者を解雇するようなケースはあるものの、その事務所の責任者が引責で辞任したなんて話は聞いたことがない。

 ロシア人の兄弟力士が大麻使用の疑いで相撲協会を解雇された。日々の報道で検尿の結果、クロらしいことが伝わってきている。報道はまるで犯罪事実が確定した容疑者のように煽り、世間の人々はそのように思わされている。だが、これだけで警察が強制力を持って動くことはできない。本人が否認し、具体的な犯罪の裏づけができない状態で、検尿の結果だけによる起訴はできない。疑わしきは罰せず、だ。逮捕も難しいのではなかろうか。

 そう思っていたら、先に逮捕されていたロシア人力士が処分保留で東京地検から釈放された。不起訴となる見通しだ。所持していた大麻が微量であったことと、犯罪当時の年齢が未成年であったこと。それに、相撲協会を解雇されたことなどがこの決定の理由らしい。具体的に大麻が証拠品として確認されてもこうだった。たとえ起訴されても、初犯は執行猶予が付くのが相場だ。

 兄弟力士の方も二人とも協会を解雇処分となった。そして弟の方の師匠だった北の湖理事長が理事長職を辞任した。表向きは自らの責任を取る形での引責辞任であるが、本音の所は自分が責任を感じたからではなく、辞めざるを得ない状況になったので、居座ることもできず、仕方なく辞任したのではなかろうか?。

 いずれにせよ、何とも後味の悪い顛末だ。ただ、これを機に人心を一新し、角界が再生されることを期待したい。

(秀)