第1627話 ■途中から見る

 今でこそ映画館は完全入替制になっているが、ずいぶん以前はそんなルールもなく、いい加減なものだった。上映開始時間など気にせず、映画の途中に入って、そこから見始め、次の回の同じところまで見たら、話がつながって一安心といった感じだ。このため、上映中であっても、出入口の扉は結構頻繁に開閉されていた。入替がないから、ずっと映画館にいることもできた。

 途中から見るというのは、時間がもったいなくないが、途中からだと、話がよく分からない場合があるが、それよりも前のシーンで伏線が張られていたら、なおさらのことだ。そして、一通りの結末だけは見てしまう。例えば、結末で死んでしまっている人が、次の回の冒頭シーンに何もなかったかのような元気な姿で登場していたりする。「ああ、この人死んでしまうのに」と思ったりした。

 そして次第に後半にかけてのストーリーが徐々につながっていく。例えるとするならば、刑事コロンボや古畑任三郎のような、事件のシーンを先に見てしまっていて、そこからその仕掛けのシーンを見ているような。そして、前の回の見始めの部分まで来たら、パズルの最後のピースがパチっとはまったような感じがする。そこで席を立っても良いのだが、時間に余裕があれば、そのままその回の最後まで見届ける。当たり前だが、また同じ結末がやってくる。

 例えば、会社から帰り着いたとき、あるいは風呂から上がってきたとき。テレビでドラマが流れているが、既に話は途中である。けど見てみると、これがなかなか面白いので、そのまま見続ける。気が付けば、ビデオで録画してあって一安心。ドラマの放送が終わって、さっきのドラマをビデオで見てみる。かつての映画を途中から見始めていた時のようだ。けど、最近のレコーダーは「追っかけ再生」ができるから、途中であろうと、最初から見ることができるようになっているけどね。

(秀)