第1681話 ■トランジスターメガフォン

 通勤途中や外出時の駅で小学生の団体に出くわすことが年に何度かある。いわゆる「校外学習」というやつで、都会の子は電車で移動するようだ。基本的に彼らは静かで整然としている。むしろ部活動などの移動で乗り合わせる中学生の方がうるさい。私のような、かつての田舎の子供となると、歩いての移動か、貸切のバスに乗っての移動で、電車ような公共の乗り物に乗っての校外学習なんてものはなかった。

 歩いて移動するときも、バスで移動するときでもそうだったが、必ずトランジスターメガフォンなるものが先生たちの手によって携行された。ハンドマイクなんて呼び方もあった。このトランジスターメガフォンでの合図を元に我々は移動していた。先生にとっては、懐かしい学生運動でのトラメガの思い出か?。その場合は拡声器という表現がしっくりくるかも。

 音はあまり良くない。しかもよくハウリングを起こしていた。今は多少性能は良くなったのだろうか?。警笛を鳴らすボタンというものもあって、これを鳴らして子供たちを注目させ、話を始める。いたずらでメガフォンを触ると、このボタンを押してみたくなる。そして、実際にメガフォンを通じて発する言葉は「石~焼き~イモ~」だったりした。

 最近見かける都会の子供たちを引率している先生たちがトランジスターメガフォンを携行している姿を見かけることはない。公共の交通機関を利用するため、そんなものを使用することができないせいかもしれない。それにしても移動中の都会の子供たちは大人しい。ちょっと不気味なほどだ。

(秀)