第1424話 ■コレクトコール

 大学時代に付き合っていた彼女を呼び寄せ、入社1年目ながら結婚した。あれだけの給料でよく生活していけたもんだと思う。家財道具のほとんどを彼女が持って来た。今となっては家電品は全て壊れてしまい、家具も引越しのタイミングに廃棄するなどして、今ではこたつにもなる座卓が残っているだけ。しかしヒーター部分はそれだけを買って、過去に2度付け替えている。

 最初は電話もなかった。今のように携帯電話があるわけでもなく、電話そのものが我が家にはなかった。週末になると二人で近くの公衆電話に行って、交代で実家に電話した。最初が自分で、次に彼女の番だ。お金がないので、コレクトコールを使う。しかし最初、我が父はコレクトコールが何ものか分からず、代わって実家にいた兄が取り次いでくれた。「元気か?、ちゃんとやってるか?」。毎回、それ以外に特に話すことなんかないが、お互い声を聞くことで安心する。

 間もなく私の母が電話を付けるための金を送ってくれることになり、しばらくして電話が付いた。そして、早速交代で実家に電話をした。「元気か?、ちゃんとやってるか?」。話していることは以前と変わらない。「電話代がないなら、コレクトコールでも良いから」と言われた。

(秀)