第1701話 ■牧やん

 旧盆は父親の初盆とあって、単身で帰省をした。15日の早朝に飛行機で出掛け、翌16日の早朝に新幹線で戻ってくるという、かなりハードなスケジュールだ。滞在時間は20時間余り。その間に、お寺に行って、家に戻っては親戚の相手をし、夜は同窓会とその後に別の友人を呼び出したりと、非常に慌しかった。

 そして、この日の最後のイベントとなった、小中時代の友人との面会での話で、他の友人たちの近況をいろいろと聞いたが、そんな中、「牧やんが自転車屋の店をやってるよ」と教えてくれた。牧田君(仮名)の小学校時分のニックネームは「牧やん」だった。

 当時から牧やんは無類の自転車好きで、仲間内での自転車ブームの際にはその中心的人物だった。小学生ながら、自分の自転車を組み上げたり、改造などを手掛け、周りの友人たちにも多大な影響を与えた。もちろん私もその影響を受けた者の一人だった。どこまで本気か分からないが、「将来、自転車屋をやりたい」といったことを聞いた覚えがある。

 早速自宅に戻って、彼の名前をインターネットで検索したところ、彼が営業している自転車店のサイトにたどり着いた。そのサイトのプロフィールによると、サラリーマン生活をしていたが、脱サラし、数年前に自転車屋を開業していた。彼の家が元々自転車屋であったわけではないのに、子供の頃の趣味を職業にしていたとはうらやましい限りである。他人事ながら、自分もちょっと嬉しい気分になった。

 早速、彼にメールを打ち、次回帰省した際には店を訪ねる旨を伝えた。輸入自転車なども手掛け、ちょっとこだわりのある店のようだ。再会が楽しみだ。

(秀)