第1738話 ■活動写真弁士
映画がかつて活動写真と呼ばれていた時代の話。もちろん、私も生まれていないが、そんな時代があったことだけは知っている。しかもはじめの頃の作品はモノクロであるのはもちろんだが、音声も含まれていなかった。このため、劇場では弁士と呼ばれる人が生で映像に合わせて台詞やト書き(ナレーション)を喋り、オーケストラボックスやお囃子で生の音楽を合わせていたと聞く。
さて、神田は神保町にある、らくごカフェ。その名の通り、落語をやっている喫茶店ということだが、夜はテーブルをとっぱらって50人くらいの落語会の会場となる。収容人数的にはやる方も聞く方も丁度いいくらいではないかと思う。そして基本的には落語を聞くところだが、たまには講談なんていうのもやっている。私はこの日、金原亭馬治くんが「文七元結」やるということで駆けつけたら、講談師との二人会だった。
この日私は生の講談を初めて見て聞いた。そしてこの日のゲストに坂本頼光なる活動写真弁士が迎えられていた。今の時代にそんな芸人がいるのかよ、という感じと、普段はどんな活動をしているのだろうかという興味がわいた。大河内傳次郎主演の無声映画「高田馬場の決闘」のDVDが上映されると、彼はナレーションとセリフをツラツラとしゃべり始めた。上映時間約6分。本来ならフィルムが11巻あったとの事だが、現存するのはこの1巻のみらしい。けど不思議なことにこの1巻の6分間で起承転結、高田馬場の決闘のストーリーが含まれていた。じゃあ、残りの10巻はどんなもんなのだろうか?。
続けての彼の出し物はオリジナルアニメーションを流しながらの活弁だった。パソコンと言う便利なもののおかげで、趣味でアニメーションを自作し、それを無声映画に見立てて、音をあわせていく。登場人物は芸能人で、森繁久彌に浦辺粂子、花沢徳衛などなど。しかも台詞はモノマネ仕立てになっている。
ネットで「坂本頼光」と検索してみたら、YouTubeで私が見たもののと別のアニメーションがアップされていた。いずれもブラックジョークに満ち、テレビなどでは公開できないネタばかりだ。なかなか面白い芸だと思ったが、このような理由で彼がブレークし桧舞台に立つことができるかは微妙だ。
(秀)
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