第1753話 ■電子出版への期待
- 2010.05.13
- コラム
電車の中で「キンドル」で本を読んでいる人を初めて見た。ページをめくる度にモノクロの画面の白と黒が一旦反転し、次の画面が表示される。内容を判別できるほどの距離ではなかったが、間違いなく日本語だった。キンドルの日本語書籍ってまだ出ていないんでは?。PDF化したファイルを見ているのだろうか?。
現在、電子書籍として流通しているものを見ると、本の出版からしばらく時間が経っているものがほとんどだ。ハードカバーに比べるといくらか安くはなっているが、既に文庫本になっていて、それとだいたい同じくらいの値段で、古本屋でハードカバーを買った方が圧倒的に安かったりする。そして何よりも電子書籍化されているタイトルが少なすぎる。
実際に電子書籍を買おうにも、欲しい本が電子書籍になっているのかどうかを調べるところから始まる。これが結構面倒である。そして、ほとんどが電子書籍化されていないという結果になる。いざ、電子書籍化されていることが確認できても、ファイルのフォーマットやら、専用の閲覧アプリケーションのインストールなど、なかなか敷居が高いのが現状である。
電子出版について、資源や環境のことを考え、私は大賛成である。但し、コンテンツが拡充されたなら、という条件が付く。例えば、読みたい本があれば、在庫を気にすることなく、配送から到着までの時間を気にすることなく、本を手にできることは素晴らしい。問題は読みたい本があること、と値段だ。
この値段が微妙である。印刷がないのだから、物流費もカットでき、従来の価格の3分の1でも利益を出せるだろう。しかしそれでは本が売れずに本屋を末端とした書籍の流通機能が大打撃を受けてしまう。印刷業界へのインパクトも相当なものだろう。かと言って、紙の本と同じ値段のままでは、入手の手間が省ける点や置き場所に困らない点などがメリットとしてあるにしても、最初に機械を買う、初期投資のコストが回収できない。
iPadも含め、早々にハードウェアの環境は整うことになる。これからしばらくの間に電子書籍は徐々に普及していくことだろう。ついてはこれからの状況を歓迎する立場で静観することにしよう。電子書籍で絶版の書籍が復刊するようなことがあれば非常に嬉しい。昔の漫画なんてのも電子書籍化されれば、買って読んでみたい気もする。
(秀)
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