第1759話 ■読むライセンス??
貸本というのは古くからあるスタイルであるが、それはまだ本を買うことがある種の贅沢であった時代の話だ。現在ではかなり廃れてしまっている。当時は貸本専門の出版というものもあったようだ。特に書籍を複写するようなことは手間やコスト、それに技術の面から心配する必要もなく、著作権の問題もさほど気にするものではなかった。
一方、貸しレコードが登場してからは30年余が経つかと思うが、当時は借りたレコードをカセットテープに録音して返却するものであったが、その複製の範囲も自分とその周りだけに留まっていたので、著作権等の問題もそれほどうるさくなかった。
それから数年後に今度はレンタルビデオなるものが登場し、次第にマーケットが拡大し、その経営母体が大規模になるにつれて、ようやくビデオや音楽CDのレンタル品に対する著作権保護の動きが登場してきた。
そして今ではインターネットを介してのデジタルコンテンツの著作権保護が求められている。ソフトウェアであったり、音楽データや動画データであったり。法規制の予想を超えるスピードで規模や技術が拡大し続けている。
そこに今後新たに書籍データの保護というものを考える必要が出てきた。従来の貸本の頃の話とは異なり、デジタルデータとなることで複製や移動が簡単に行えるようになった。デジタルコンテンツとしてダウンロード等で販売されるものには著作権保護の対策がとられるようだが、一方で既存の紙媒体の本をスキャンしてデータ化することも想定しておかないといけない。
私も蔵書の保管場所問題を解消するために、本をバラしてスキャンし、PDFファイルにて電子化しようかと思っている。もちろん、そのバラした本は捨ててしまう。それを必要に応じてパソコン等で閲覧する。そんな気はさらさらないが、本を貸す感覚で、他人にPDFファイルを渡すことも容量の問題をクリアすれば簡単にできてしまう。
ソフトウェアの場合、ソフトを買ったことは使用権(ライセンス)を非独占的に購入しただけでしかない。一方、本の場合はバラそうが書き込もうが自由で、本そのものの所有権を購入した感覚でいた。本に対して、「読むライセンス」なんて感覚はない。それが今後デジタルデータとして所有した場合はどうなるのか?。既存の本をPDFとしてデジタル化することは問題ないのか?。新たな技術が新たな著作権問題を生む。世の常かな。
(秀)
-
前の記事
第1758話 ■蔵書を電子化する計画 2010.05.26
-
次の記事
第1760話 ■元教員という肩書 2010.05.28