第1809話 ■本棚願望

 本屋で本棚を目の前にすると、「これらを全部読めたら良いのに」なんて気分になる。かつておもちゃ屋で、「全部欲しい」と言っていたのとほとんど成長していない。もちろん、そんなに多く読めやしないし、第一買うだけの金がなければ、置き場所にも困ってしまう。せめて、スカウターのようなメガネを通せば、実際に自分に相応しく、読むべき本が光ってくれていれば有難いのだが。

 読み終わった本などを置き場所に困って、捨てるわけにもいかず、自炊してデータ化することが習慣づいている。スキャナーに用紙が吸い込まれていく度に、「ああ、こんな速度で本が読めたらなあ」なんて思う。中にはすごい読書家や速読技術を身に付けている人がいて、相当数の本を読むことだろうが、それは魅力的に思える一方で、「本を買う金が続かなさそう」なんて、余計なことを心配してしまう。速読の人は買わずに立ち読みでいけるんだろうな、なんて変に納得したりする。

 しかし、世の多くの人はこうはいかない。限られた時間の中から、時間を捻出し、ポケットマネーの中から選んだ本を読んでいる。本屋の本棚を目の当たりにして、「最も自分に適している本はどれだろう?」と思う。本屋の規模にもよるが、最適な本はこの店に最初から並んでいないのかも知れないし、さっき別の人が買って行ってしまい、売り切れなのかもしれない。

 最近はリアルな本屋ではなく、ネットで本を買うことが随分と増えた。強力な検索機能を持っていて、本屋に並んでいない本も探し出してくれる。絶版本も探し出せ、場合によってはそれを買うことができる。ただ、ネット本屋にも弱点がある。すぐに手にすることが出来ないことと、ページをめくることが基本的にできないことだ。もちろんこれらは十分承知の上で利用者は本を買っている。けど、実際に本屋でその本を手にしてページをめくってみたとしたら、その後そのまま本棚に戻してしまうような本を買ってしまったことはないだろうか?。私はある。それも何度もある。

 本棚の前でいつも思う。速読できる技術も良いが、それ以上に自分が読むべき本を教えてくれるスカウターが私は欲しい。ネット書店でも使いたい。

(秀)