第1891話 ■台風報道のニーズ

 昼間の台風接近。子どもの頃の緊張感を思い出す。大雨を伴い、川が溢れて冠水することもしばしばあった。停電することも以前は多く、ロウソクを準備して、窓ガラスの音鳴を聞いて夜を過ごし、いつの間にか寝てしまっていた。行動範囲も狭かったので、移動にどうということはなく、じっと家にいて、嵐が去るのを待つしかなかった。郷里での冠水はやや減ったみたいだが、数年に一度は市内の中心部も冠水してしまうようだ。

 都市での台風被害は地方のそれとはかなり違う。移動手段の問題がある。無理をしてでも通勤・出社し、帰りの電車やバスが止まってしまう例。あるいは逆に朝から交通網がマヒして、通勤がままならない例。駅に辿りつけても、電車が止まっている、遅れている、そして人が溢れている。すぐには電車に乗れないし、いつも以上の混雑。加えて、間引き運転。前後の電車の都合もあったりして、しばしば止まり、そのような状況で電車に閉じ込められている時間はいつもより長い。会社なり、自宅なり、着いた時にはヘロヘロになっている。

 さて、出勤などない私は、本日(8月22日)は出掛けずに家にいて、夕方頃からはテレビでニュース番組を見ながら、窓から常磐線が動いているのかを確認していた。そんな感じでテレビの報道を見ながら思ったこと。これから台風が近づくであろう場所の様子を先回りして伝えるのは、まあ許そう。その一方で、既に状況は変わってしまっている、「こんなに降りました」的な昼頃の映像を映す意味がわからない。道路が冠水し、マンホールの蓋が水圧で跳ね上げられる映像は確かにインパクトがあるが、このタイミングで見せる必要が本当にあるのだろうか?。

 会社が終わって、これから帰宅しようというタイミングだから、多くの人は電車の運行状況がまずに気になるはず。当のお父さんはそのテレビニュースを見ないかもしれないが、家族がそれを見ていて、「山手線が止まっているみたいよ」などと、LINEやメールでのやり取りがあるかもしれない。逆に、お父さんが電車の運行状況を自宅に問い合わせることもあるかも。昼間の冠水した街の様子の映像を流すよりも、新宿駅や渋谷駅、その他主要な駅の様子を生中継してくれた方がどれほどバリューがあるだろうと思ってやまない。

 今回もリアルタイムな情報としては、Twitterが活躍したらしい。ニュースサイトとかでは間に合わない情報はこのようなメディアが得意とするところだろう。そんな中、テレビはインパクトを追い求めるがあまり、求められるべき情報が何であるかを完全に見失っていたと言える。

(秀)