第296話 ■田中麗奈というブランド

 「田中麗奈」と言われてもピンと来ない人がいるとすれば、「なっちゃん」と言えば分かってもらえるだろうか。あのCMの印象はそれほどインパクトが強く、名前よりも先に「なっちゃん」という呼び名が先行していた。どのくらいの人が気付いているか分からないが、彼女は広末涼子と同じ年で今年20歳になる。あまり、この2人が直接的に比較されないのは同じCM畑からのブレイクでもキャラクターが違うからであろうか?。

 彼女はテレビドラマを経ずに、いきなり映画での主演デビューを果たしている。「がんばっていきまっしょい」というのがその映画のタイトルである。篠村悦子というのが彼女の役どころである。舞台設定は’76年で四国の共学高校のボート部だ。終始彼女が笑顔を見せるようなシーンはないが、せつない原寸大の高校生(撮影当時はそうだった)の生態が良く描かれていると思う。どこか不器用で、それでいてひたむきな主人公のキャラクターが彼女のキャラクターとだぶって見える。

 彼女は多くのCMに出演しているため、毎日でもその姿を見掛けるが、CMや雑誌媒体以外(テレビドラマやバラエティ番組)で彼女の姿を目にすることはない。私はこの方針に賛成である。とびきりの美人でもなく、何かの能力を持っているわけでもなく、それでも彼女は芸能界をひょうひょうと泳いでいる。これが、田中麗奈というブランドの商品力なのだろう。癒し系の線であることは間違いない。しばらくぶりに同窓会や成人式の会場で会った、クラスメイトが予想外に美しい女性になっていた。そんな感じの存在である。何も具体的な思い出がなくても、そんな雰囲気が感じられればよい。残念なことに私の記憶の中でも彼女とだぶる女性はいないし。