第462話 ■ペイデイ

 私には多少の収集癖がある。特に高価なものであったり、希少価値があるものを対象にしているわけでなく、あるカテゴリーに特化した形でのもの集めでもない。単に自己満足のコレクションでしかない。その一部についてはこれまでのコラムの中で都度紹介してきたが、その続きと言うべき話をこれから始めたい。  基本的に私が集めている(正しくは捨てずに取っておく)ものは、これを捨ててしまうとこの世から絶滅してしまうようなものが中心である。しかも原体験を伴わないものには魅力を感じない。しかし、そのときにその重要性が分からずに手放してしまったものは数しれない。かつてのおもちゃで超合金やソフビ人形などは今もコレクターの間で珍重されているので絶滅することはないだろうし、そんなものは私のコレクションの対象にはならない。しかし、当時販売されていたキャラクターのボードゲームの類はそのような市場にもなかなか出てこない。捨てずに取っておけばと思うと今でも悔しい。

 総じてボードゲームとなるとメジャーだった億万長者ゲームですら、中古市場で見かけることは難しい。ましてその姉妹品的位置づけの社長ゲームとなるとまず無理だろう(プレステのゲームとしては最近復刻しているが)。さらにこれから話をしたい、私が最も好きだったボードゲーム「ペイデイ」はそのマイナーさのあまり、知る人がほとんどいないであろうボードゲームである。私もどこの会社が出していたものかも覚えていない。しかし、私自身のおもちゃランキングでは電子ブロックに次ぐ地位を占めている。昭和五〇年頃の話である。

 「ペイデイ」とは給料日という意味である。ボードがちょうどカレンダーになっており、サイコロの出目に従い駒を進めるだけだが、マス目に示されてめくるカードに様々な指令が書かれており、それでお金の請求などがやってくる。二五日(だったと思う)が給料日でそこを通過するごとに三二五ドルがもらえた。当時に為替レートに比べてもずいぶんちんけな給料であるが、所詮はゲームだし、金銭感覚がまだいい加減な子供であるから、それほど問題ではない。

 このゲームは地元の玩具店のデッドストックを五〇〇円で手に入れたものだが、ひょんなことから手放してしまった。一緒にこのゲームをやった友達がいたくこのゲームを気に入り、その友達の他のおもちゃ(ツクダオリジナルの「デジタロン」)と交換してしまったのである。「そんなに気に入ってくれたなら」、と得意になってしまったのがいけなかった。子供らしいのか、子供らしくないのか?。こんな悔しさが私の収集癖の源泉であると最近ようやく気がついた。

(秀)