第478話 ■色を点けてくれ

 最近の私の通勤途中に聞く音楽は、ヒッキーでなければ、あゆでもなく、「ロンバケ」である。’81年にリリースされた、大滝詠一の「ロングバケーション」がこのほど20周年記念として復刻リリースされた。20年前にアナログLPで一世を風靡したこのアルバムは、日本で最初の音楽CDとしてリリースされ、つい最近でも「CD選書シリーズ」として販売されている。

 復刻版としてこの度リリースされたのは、インストゥメンタルのボーナストラック9曲が付いた事とマスタリングをやり直して、よりクリアな音になっているとの事。あいにく、リマスタリングの効果は私の耳では聞き分けきれなかったが。2,001円という半端な値付けは大滝氏流の2001年に掛けた洒落のつもりなのだろう。

 私にとってこのアルバムは80年代を代表する珠玉の一枚と言える。あれからもう20年。相変わらず、永井博氏のイラストのジャケットは今も色あわせていない。当時の若者達の車には必ずこのアルバムのカセットテープが乗っていたらしいが、当時中高生だった私にそんな色付いた思い出なんかない。雨が降った日の英語の授業中、斜め前の席の女の子と、その先の中庭で雨に濡れた芝をぼんやりと眺めていた。決まって、頭の中では「雨のウェンズディ」がこだましていた。やはり、思い出はモノクロームだなあ。色を点けてくれ。(「君は天然色」の歌詞に従い、「着けてくれ」ではない)

(秀)