第494話 ■平凡と明星

 小学校の高学年頃から中学まで、芸能雑誌の平凡と明星がクラスでブームとなった。本誌の数々のグラビアも魅力だが、私達には毎月付録に付いてくる歌本が魅力であった。その歌本の巻頭カラーページを飾るのは当時のトップスターの新曲と決まっていた。まだリリースされていない、もちろん聞いた事もない曲の歌詞とコード、それにたまには楽譜が載っていた。

 田舎に住む少年少女にとってはテレビとこの芸能雑誌ぐらいで芸能人とのつながりを感じるしかできない。コンサートやイベントなど田舎にはやって来ないし、実物を見るには相応の努力と出費が必要となるが、少年少女にはなかなか難しい。ファンクラブという手もあるが、イベントへの参加も交通費を考えれば現実的なものではなく、会報が送られてくるだけのようなものである。それ故、我々は熱心にこれら芸能雑誌を買い続けた。そして、お金にちょっと余裕があり場合は、平凡と明星の両方を買い、それでもまだ余裕があると、レコードを買っていた。

 友達の家に遊びに行くと、決まって付録のポスターが貼られていたし、雑誌を切り抜いて下敷きに挟んだりもした。折しも、当時70年代の終わりから80年代の初頭と言えば、ザ・ベストテンをはじめとする歌番組も華やかな時代であった。今では明星だけが「Myojo」とリニューアルされ発売されているが、かつての勢いは感じられない。平凡がいつ廃刊になってしまったかあいにく記憶にないが、当時の社名、平凡社もそのしばらく後にマガジンハウスに変わってしまった。

(秀)