第505話 ■予言者のテクニック

 朝起きて、テレビを点けた途端に「今日最悪の運勢は『おうし座』です」なんて言われると、一日中不愉快でしょうがない。徹底して占いを否定している私でさえこうなのだから、一般の人々の思いは相当なものだろう。何かうまくいかないことがあると、「占い、当たってる!」と思うかもしれない。例えそれが、電車の乗り継ぎが悪かったとか、信号待ちだったにせよ。しかし、それが占いの結果であると証明することなど誰にもできない。電車も信号もあなたの星座に関わらず、いつものように淡々と動いている。

 人の不安を煽ることで良からぬことを企んでいる奴もいる。「○月×日に大地震が起きる」などと予言する。本当に的中させれば、それはそれで大変な予言者として名を成すことができる。しかし、それはまぐれでしかなく、同様のことを何度も連続して的中させるわけにもいかない。やがて、その予言が外れてしまっても、「私の超能力で地震を静めた」なんて、言い出す。「それなら、最初っから地震を静めろー!」。

 しかし、これではこのインチキ予言者は「今日も大地震が起きなかったのは私の超能力のおかげだ!」と日々言い続けているだけの変な人のまま、世に出ることはできない。世に出るためにはとりあえず目に見える事象を言い当てなければならない。その最も矮小化したものが「今日最悪の運勢は『おうし座』です」というやつである。あとは自然と起きる事象を適当に占いの結果と結び付けてくれる人々を待っていれば良いだけだ。

(秀)