第510話 ■スタバとドトール

 営業の応販で客先同行した(←サラリーマン以外の人にも通じるかな?)。久しぶりの外出である。ついでに良い天気だ。そつなく仕事も終わって、会社へ戻るために地下鉄の駅に向かっている最中、スターバックスを発見し、「休憩」と称し、店へと吸い込まれて行った。スターバックスは新興と言うか後発で、かつて私がよく外に出ていたときにあったのはドトールが多かった。あるいはドトールと同じ様な店の作りや値段付けをした店だった。

 ひょっとして、スターバックスもドトールも近所にない人にはこれが何なのかまだ分かっていないかもしれないので、書いておくが、両方ともコーヒースタンドである。喫茶店と言うよりもファーストフード風のセルフサービスの店である。幾つかのバリエーションでのコーヒーの品揃えの他に、オレンジジュースやパンなども売っている。

 スタバのコーヒーの値段はドトールのそれの約2倍である。それでも三百数十円程度と喫茶店に比べれば確かに安い。この価格差のポイントは椅子に座れるかどうかにあった。ドトールは立ったまま、(夏場なら)グーッと飲み干し、汗が引いたのを確認してさっさと出ていくのが正しい作法である。サラリーマンと思しき人が多いのが特徴である。一方、スタバは腰を下ろして、通りをせわしく歩き去っていく人々を眺めながらでも、ゆったりとカップが汗をかくのも気にせずに、まさに休憩として利用するのが好ましい。好きな本を読むのも良かろう。

 店の地下へと吸い込まれた我々は、ソファに腰を下ろすと、しばしの休息を行った。地下なので、自分のはもちろん、煩わしい他人の携帯の呼び出し音や会話もなくて、それもまたうれしい。「うちの駅の近くにスタバがあるんだけど、今度は横にドトールができてるんだよ」、と自分。そのスタバはいつも繁盛しているようだが、これで熾烈な競争が始まることだろう。「サラリーマンはスタバよりもドトールに入りますね」、と連れが言う。「安いから?」、「いいえ、たばこが吸えるからですよ」。たばこを吸わないので、そんな意識は全くなかった。カップのアイスモカが底を突いてしまった。時計を見て一旦地上に出ると、すぐ側の地下鉄へと再度吸い込まれて行った。

(秀)