第535話 ■効用について

 経済学の用語に「効用」というものがある。文字通り、商品やサービスがどれだけ有用性の観点からみて価値があるかの尺度である。例えば1杯目のビールは非常に美味い。ところが2杯、3杯と進むにつれて、だんだんその美味さは薄れていく。この美味いと感じるのがビールの効用であり、次第に単位あたり(例えばビール1杯毎)の効用は小さくなっていく。

 やがて、単位あたりの効用ゼロになり、それ以降は、マイナスに転じてしまう。飲み放題や食い放題で元を取ろうと詰め込んでしまうと、せっかく食べた満足感も台無しになってしまう。「あのときやめておけば良かった」では、元も子もない。

 効用は個人によって違うし、モノによっても違うが、その効用は一般にその商品を消費することで得ることができる。ここで疑問。宝石の持つ効用とは何だろうか?。装飾用の宝石は消耗することもなければ消費することもない。見たところで、触ったところで、減るものではない。と言うことは、眺めて、「ああ、綺麗だなあ」と思うこと、それに所有することの満足感を加えたものが宝石の効用と言えるだろう。

 あるものは10万円。また、あるものは100万円。仮に質量の差に10倍の差があろうと、「ああ、綺麗だなあ」という気持ちに10倍の差があるとは思えないし、所有することの満足感に10倍の差があるとも思えない。人はこの効用を求めて、金を商品に投じているはずだが、最終的に物欲は理屈ではないようだ。さらなる考察を待って欲しい。

(秀)