第568話 ■新幹線

 帰省のための新幹線の車中。かれこれ5時間座っているが、目的地まではまだまだ遠い。ただいま広島駅を通過。雨が降っている。

 ところで、「新幹線」とは妙な名前である。開通から40年近く経とうというのに「新」なのである。「新生代は7000万年前からだ」、と反論されれば身も蓋もないが、さらなる新たな幹線ができた際に、それをどう呼ぶつもりなのだろうか?。

 それと、新幹線の不思議、その2。「飛行機ですか?、新幹線ですか?」と聞かれる。飛行機はあの空を飛ぶ飛行機であることは疑いない。乗り物のカテゴリーの1つである。これに似た使い方としては、「電車ですか?、バスですか?」というのがある。ところで、この新幹線というのは何だ?。文字面から言えば、新しい幹線である。要は路線自体を指すにしかすぎない。しかし、多くの人々は「新幹線」という語彙の中にひかり号やのぞみ号の車両のイメージを抱いている。路線名が乗り物に転じているのである。

 「飛行機ですか?、新幹線ですか?」という問いは、乗り物と交通ルートを同列で扱った、変な日本語なのだ。この条件をそのまま別の例に置き換えると、「電車ですか?、第一京浜ですか?」ということになる。蛇足だが、私の勤めている会社は第一京浜沿いにあり、電車で通っている。何だか混乱してきた。

 「あっ、新幹線だ!」。ふつうこの言葉はひかり号などの車両を指さして発する言葉である。車両のない単なる線路を指さしてそう叫ぶ子供がいたら、それはそれで不気味だ。こんなばかげたことを考えながら暇をつぶしているが、目的地まではまだまだ遠い。

(秀)