第604話 ■共同募金

 10月1日は暦の上で、様々な日であった。日本酒の日であったり、コーヒーの日、印章(ハンコ)の日、浄化槽の日、法の日であったり。そして、共同募金の開始日として、赤い羽根の日でもある。この日の朝、通勤途中、新橋駅でJRから都営地下鉄に乗り換える際に、募金を呼び掛ける女子生徒達の姿を見た。

 「この子達は今日学校どうしたんだろうか?」。募金活動をするくらいだから、学校をさぼるような子ではないだろう。しかも、きちんと制服を着ているし。ボランティアの授業の一環か?。その答は「都民の日」だった。都内の公立の学校はこの日休みなのである。それでもせっかくの休みの日にボランティア活動とは感心。

 感心したからには、募金をしてやりたいのだが、どうも気が引けてしまう。かわいい、制服を着た女子中学生(ひょっとしたら高校生)が3人グループ毎に数メートルおきで声を掛けている。真ん中の子が募金箱を持って、赤い羽根の束を持った子がその両脇を固めている。募金をすると、この女の子達が羽根を付けてくれるんだ。恥ずかしい、ああ、恥ずかしい。公衆の面前で善人ぶって募金をする姿を晒すのが、まず恥ずかしい。同じ会社の人も多く歩いているし。そして女子中学生に羽根を付けてもらうのがもっと恥ずかしい。赤い羽根を付けて街を歩くのも「私は募金しました」と誇示しているようで気が引ける。

 ところで、勇気を振り絞って募金箱まで歩み寄り、財布を出した途端に1万円札しか入っていなかったらどうすればいいのだろうか?。そう思うとますます気が引けるが、向かいのKIOSKで何か買って小銭を作れば良いのだと、さっき気が付いた。ボランティアの皆さん、御免なさい。町内会の募金でその分も募金するからね。

(秀)