第628話 ■対岸の包丁男

 子供達が通う小学校への通学路に「ひったくりに注意」という、黄色い派手派手しいのぼりが突如現れた。確かにここで数日前にひったくり事件が起きたと噂で聞いた。一年程前もそんな騒ぎもあった。複数件起き、そのうちの一つは強盗事件だった。はたしてそのときの犯人は捕まったのやら。そんな噂はあまり聞えて来ないものなのだろうが。

 大阪、池田小学校の事件以来、学校もいろいろと大変だ。私の子供達が通う学校の例でも、保護者も来校したら事務室で受付簿に名前や用件を記載して、バッジをもらうことになった。そのくせには現在2Fにある職員室を1Fに持って来ることには、書類の保管、盗難対策を理由に躊躇している。「書類と子供とどっちが大事だ」と聞くまでもないが、実行しないところをみると、所詮、対岸の火事程度としか思っていないようだ。緊張感も日増しに緩んできている。

 そんな中、数日前に小学校で大事件が起きた。「包丁を持った人がうろうろしてた」という子供の目撃証言で警察官が出動する騒ぎに発展。娘にその顛末を聞くと、包丁男は「包丁研ぎ屋」さんだったらしい。安心するとともに、笑って済まされるのも、やはり対岸の火事ということだろうが、ちょっと複雑な心境でもある。

(秀)