第647話 ■指ギロチン

 夏休み、小学校のプールが終わった後に校門付近で何人かの人が集まっていた。一緒にプールに来ていた同じ町区の上級生の友達がその集団の中心であった。小さなギロチンで指をじょきんと、テレビで見たその手品を披露してくれる。「次、僕もやって、僕もやって」。「あっ、痛くない」。「ねえ、貸して、貸して」。「だーめ」。今度はゆっくりとタネを仕掛けず、「痛い!」とやる。

 そのおもちゃが学校の通りにある駄菓子屋で売っていることを教わると、早速翌日には買い求めていた。値段は70円だったと思う。買ってみると、タネは極めて単純である。刃がL字状に垂直に2枚あり、その支点がギロチンの軸の片方にピンで止められている。穴に指などを入れて下から引き上げておけばタネがセットされる。上からギロチンを落とした際に刃(と言っても、切れはしない。単なる金属の板)が指に当たって、くるりと刃が回転し、指は無事といった案配である。

 その駄菓子屋で初回入荷分が売り切れると、次の入荷までしばらく時間があったようで、この間は私も含めた最初に買った者達の天下であった。しかし、中にはタネあかしをしてしまう者が現れたようで、ある日を境に急に受けなくなってしまった。同様の理由で不遇だった商品に「イテテガム」というのがあったなあ。「イテテガム」については明日。

(秀)