第694話 ■「建国記念の日」だ!

 2月11日は「建国記念日」ではない。「建国記念の日」だ。「の」の字にこだわってみたい。一字の違いだが、意味の違いは結構大きいかも。テレビなどで「建国記念日の今日、各地では….」、なんて原稿を読み上げるアナウンサーなど見つけると嬉しくなってしまう。アナウンサーが間違ったのか、原稿を書き起こした編集者が悪いのかは分からないが、認知度がこの程度なのだという証拠だったりする。

 中学生のとき、社会科の授業で「『建国記念の日』の起源は何か?」と先生に問われた。指名を受けた私はこのとき、古事記に出てくる「国生み」の話を挙げ、「日本が誕生した日と言われている日だから」と答えた。しかしその先生は私のこの答えを笑った。いつも大人びた現実的なことを言う私がそんな神話をその起源として回答したからであろう。もちろん、そんな神話なんか信じているはずはなかったが、私が持ち合わせていた範囲での回答をしたつもりだった。そして先生が紹介した回答というのは、「2月11日は1889年に大日本帝国憲法(明治憲法)が発布された日で、近代日本が誕生した日として、それが建国記念の日の起源である」というものだった。

 戦前この日は「紀元節」と呼ばれていた。調べてみたら先ほどの私の神話の話は勘違いで、「紀元節」の起源は、神武天皇が即位した日とされていた。建国記念の日が明治憲法発布の日をその起源としたにしても、その日をわざわざ2月11日にしたのは、やはり紀元節によるものと思われる。不思議なことに2月11日が建国記念の日であることは法律で決められているわけでない。日付は政令で決めるという玉虫色の祝日として誕生した。明確に建国を決める日がないから間に「の」の字を置いてみたりする。毎年この祝日をめぐって賛否がもめるのもここに原因がありそうだ。

 とりあえず三連休(だった)。「(今日、)何で休みなんだっけ?」という人も多かったかも。またそれ以上に「建国記念日」だと思っている人が多いに違いない。そうだ、この国には建国記念日がないんだよ。「だから何?」。建国記念日なんか無くても愛国心や日本人としてのアイデンティティーを阻害していることなどない。逆に「建国をしのび、国を愛する心を養う」というこの祝日の意義も満たされてはいない。紀元節の復活やその反対など私はあまり興味がないが、いずれにしろ、法律で決まっている祝日の名前ぐらいは正しく呼びあらわしたいと思っている。いっそ、こんな日こそ根拠が希薄であるため、ハッピーマンデーにしてしまえば良さそうな気がするが、それこそ賛否をめぐって、大きな騒ぎが巻き起こることだろう。

(秀)