第706話 ■相席

 昼休みの昼食時間に何人かで連れ立って、近くの居酒屋に出かけた。昼間から酒盛りを始めるわけではない。昼間のランチ狙いである。夜は居酒屋、昼は定食屋というやつだ。店にたどり着くととき既に遅く、入り口付近に何人かの行列ができていた。その間から中を覗きこむと、確かに混んでいるが、4人がけの席に一人で陣取っているオヤジなどがいる。「何名様ですか?」。「○人(です)」。混んでいるときにはこの会話の後に、「席が別々でも良いですか?」または「ご相席でも良いですか?」と聞かれる。「はい、良いです」と答え、店員に席まで案内された。既に席に座っていた客に「ご相席お願いします」と店員が挨拶し、我々も「失礼します」と言って、席に着く。「ご注文お決まりですか?」。「ランチ」。

 では同じ状況を逆の立場でもう一度見てみよう。今度はタイミング良く会社を出たので、店はまだ空いていて、すぐに席に案内された。徐々に店は混んで来る。しばらくすると、店員が客を引き連れ現れた。「ご相席お願いします」。こんなとき、相手が若い女性であることはまずない。有無も言わさず、相席が強要される。

 席が空くのを待っている場合、相席が嫌なら後の客を先に行かせても、それを断る選択肢はある。ところが先に席に座っていて、別に「後から相席になるかもしれませんが、そのときは宜しくお願いします」、なんて説明は一切受けていないのに、勝手に相席の客を連れて来られる。相手は相席でも良くても、こっちは嫌かもしれない。しかし、相手が連れて来られている目の前で、相席を断ることなどまずできない。後から来た者には選択権があり、先に来ていた者には選択権がない。相席とはこんな理不尽なシステムだと思う。

(秀)