第749話 ■土禁
- 2002.05.02
- コラム
日本人の車を愛する姿勢は一種異常で、休日の洗車場などとなると、順番待ちの車がひしめき合おうと、熱心に手洗いで車を洗っている輩がいる。洗った後はワックス掛け。もちろん手でやる。ワックスも拭き落とし、一通り外周りが済むと今度は車内の掃除機掛けへと移る。車内の掃除機掛けにも熱心なわけは「車内土足禁止」であるため、入念に砂などを吸い出しておかねば気がすまないからだ。
私がガソリンスタンドでバイトしていた頃、給油が済んだ車や洗車をする車を動かさなくてはならないことが多かった。そんなときその車が「土禁」だとやっかいだ。耐油性の安全靴をきつく紐を縛って履いているため、その脱ぎ履きは結構面倒くさい。車内に下足用のトレイを置いてあれば良いが、それが見つからないときは膝の上に安全靴を底を上にして載せ、他人様の車を運転しなくてはならない。あまりに面倒なので、そのうち靴を脱ぐのをやめ、タオルを床やペダル部に敷いて乗るようになった。
何もバイトのときだけでない。たまたま乗せてもらった車が土禁だったりする。それに気がつかないで乗り込むと「土禁だから、靴脱いで」と言われて、ちょっと引いてしまう。あるいは、後部座席に置かれたトレイに足を揃えてじっとしているしかない。決まって、車内にはチャラチャラとした飾り物があり、床には厚手のカーペットが敷かれている。ところがそこまで車を愛する割には車内禁煙ではなかったりする。
私のバイト先での経験によると、土禁車両率は約15%。ガテン系の人に限ってみるとその確率は7割を超えると思われる。女性の場合はそのガテン系の連れ(彼女)もそうだが、それ以外にもヒールの高い靴を日常的に履く人の場合もその確率は高い。ヒールでは車が運転しづらいからそうだろう。以前何度か駐車場に脱ぎ置かれ放置されたハイヒールを目にしたことがある。その履き揃えられたハイヒールというのは地面にありながらも、ドッキリしてしまう。ところでこの女性は車を降りるときどうしたんだろうねー。
(秀)
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