第757話 ■整形美人

 これはコメディタッチのラブストーリーである。これまでにも私が唱えて来たセオリー通り、三角関係、四角関係が存在するし、恋愛が成就するための障害も存在する。ただ単純なセオリーだけに止まっていないのは、主人公の女性が整形美人であること。整形した女性のラブストーリーと言うと、好きな男性の気を引くために整形した女性という設定が思いつくかもしれないが、このドラマの設定は前後がそれとは逆。自分の容姿が気に入らなかった女性が整形した途端に恋に陥ることで話は始まる。

 米倉涼子演じる早乙女保奈美は銀行勤めで貯えた金を使い、外国で約八百万円(滞在費含む)を掛けて顔だけでなく全身も整形し家に帰って来た。彼女の整形の動機は「見返してやること」。そして、その直後に花屋の前で藤島(椎名桔平)と出会う。彼は生け花、藤島流の家元。生け花のための花を自ら探しに来ていた彼を彼女は最初「花屋」だと思い込み、彼をそう呼ぶようになった。一方彼もこれまで身の回りにいた女性とは全く違った彼女の雰囲気に心乱され惹かれていく。自然の美を愛す彼と、人工的な美を持つ彼女との皮肉がある。

 彼女には双子の妹、成美がいる。整形の前後を表現する効果を狙っての設定だろう。この女性、虻川(あぶかわ)美穂子という、お笑い芸人らしい。毎回、保奈美が泣き崩れるようなシーンがあり、そのとき、画面はグレイのモノトーンに変わって、顔も整形前の顔になる。これは虻川の二役で、泣き崩れた惨めな表情のため、ちょっとかわいそうな役どころ。一方、母親役として共演の柴田理恵が非常に良い味を出している。演技でも何でもなく、あのまんま。要ははまり役ということか。

 保奈美と藤島の恋に対する障害は藤島の婚約者(青田浩子)の存在と、家元としての彼を取り巻く環境(婚約者の存在もこれに大きく関係している)。これに、整形の事実を打ち明けた際の彼の反応が加味されるかどうかは不明。番組の最後に「当番組は整形を推奨しているわけではありません」といった旨のお断りのテロップが入るが、整形してアンハッピーな終わり方をするような番組は作れないだろう、と読んで、エンディングははやりハッピーエンド。少なくとも保奈美は隣に住む、幼なじみの良平(加藤晴彦)とはくっつくだろう。となると、そのあおりを成美がくうはめに。う~ん、果たしてどっちに。

(秀)