第76話 ■運転免許

 中学3年のときの初の同窓会(クラス会)が行われたのは、卒業から3年後のことだった。高校生が公衆の面前で酒を飲むわけにはいかないため、会場はクラスメイトの家である。そう言えば中学校を卒業するときにもこの家に集まって、飲酒ありでドンジャカやった覚えがある。そこは自動車修理工場を営んでいた。

 高校を卒業する時に開かれたその同窓会での話題の1つは「もう免許取ったか?」ということだった。もちろん車の免許である。高校を出て就職するものが多く、そのほとんどが既に免許を取っていた。そうでないものも「今、○段階」と言っていた。教習所で久しぶりに再会したことや、どの教習所?、いつ?、というのが話題の中心である。4月から何をするのか?、どこに就職したかよりもそれが重要なのである。自分は全く蚊帳の外であった。

 酔いが醒めて、残っている連中でドライブに出掛けることになった。何しろ車の心配は無用である。ガレージには数台の代車が眠っているのだ。その頃は車に疎かったが、クレスタが1台あり、誰もがそれを運転したがった。ぐるぐると市内を周り、とりあえず喫茶店で落ち着くことにした。遠目にみえる、「UCC」のネオンを目指し、3台の初心者車が連なっていた。たどり着いて一同たまげた。そこは喫茶店ではなく、UCCの営業所で、既にシャッターが下りていた。喫茶店にしてはでかいし派手な看板と思ったのは着いてからのことだった。

 とりあえず別の店にたどり着くと、うち1台の車の調子がおかしく、正常に帰ることはできないだろう、ということになった。それでも大丈夫。修理工場だから。早速レッカー車を取りに戻り、引いて帰ることになった。よくも狭い田舎の道を初心者が引いて帰れたなあ。