第760話 ■歌詞が覚えられなくなったわけ

 歌の歌詞をなかなか覚えられないようになった。こんなことをもらす私でも子供の頃は何度か曲を聞けばメロディも歌詞もすらすら覚えきれたのに。その証拠に子供の頃覚えた曲はテレビの主題歌であろうと、歌謡曲であろうと今でもはっきりと覚えているのは結構数多い。ほとんど無駄記憶。

 確かに昔の曲は曲の構成が比較的簡単というか単純だった。しかし最近の曲は1番と2番のメロディが微妙に異なっていたり、メロディとはちょっと異なる展開がサビの前後などに入るようなった曲が増えている。これでは歌詞どころかメロディの方も覚えるにおぼつかなくなってしまう。結局はサビばっかりが頭の中で渦巻く曲が増えたような気がする。

 しかしながら、歌詞を覚えにくくなったのは曲の構成が複雑になって、そっちを覚えるのに気が集中しているばかりでないことや、単に年を取ったせいだけでないことにようやく気がついた。それはボキャブラリだ。歌詞をまったく覚えていないかと言うとそうでもない。大体のキーワードは頭に残っている。歌詞にストーリー性があればなおさらの事である。しかし、その言い回しがリズムに乗らなかったりする。要は言葉を頭の中で再構成し、それを記憶するにあたり適当に置き換えてしまっているからだ。

 子供の頃は歌詞の意味など分からず、歌詞カードの漢字も読めない状態では歌詞の言葉をそれこそ耳から聞いてそのまま覚えた。だから聞こえたとおりに「ひいじいさんにつれられていっーちゃーた(赤い靴)」とか、「のらりくらりのふーなびとが(花)」とか歌ってしまう。ところが人は成長するにつれ、そんな覚え方をしなくなる。生きてく上で覚えることが増えた分、抽象化することや言葉を置き換えて記憶するようになった。

 その結果、歌詞をそのままではなく、記憶に残りやすいキーワードや覚えやすいサビの部分ばっかりを記憶し、いざそれを引き出そうとすると、「てにをは」や言い回しが怪しくなり、リズムとずれてしまうのである。だからと言って、今さら、歌詞を書き写しながら覚えるのもねー。

(秀)