第761話 ■桃太郎侍

 25年くらい前だろうか?、テレビ放送され、高橋英樹が演じ、彼の代表作となっている。大名の子として生まれながらも、双子であったために、里子に出され、姓は日本一、名を桃太郎と名のる浪人として長屋に住んでいる。実はこの「桃太郎侍」、このテレビ放送よりも遙か前、市川雷蔵主演により映画化されていた。このときのストーリーはお家騒動のさなか、双子の若殿を桃太郎が助けるというのがメインストーリーだったらしい。テレビでもこの話は放送の最後の回あたりに登場している。

 一方、ドラマの方は毎回お家騒動が起きるわけでなく、庶民を苦しめる鬼の悪役人を切っては捨て、切っては捨てのお決まりの時代劇だった。悪事の証拠を掴むと「許さん!」とカメラ目線で大見得を切って、今にも乗り込んで彼らを成敗しそうな勢いながら、その前に一旦家に帰って着替えて来ないといけない。夜討ちに行くにもかかわらず、「あの長屋のどこに隠してるんだ?」、と言うほどのとても派手な着物である。それに般若の面。それは着けてから家を出るのか、現地に到着してから着けるのかは分からないが、面は着けていないにしろ、派手な着物を着て長屋を出る時に長屋の住民に見つかったりしないのか?。それとも現地でこっそり着替えているのか?。

 そして討入りの瞬間、鈴の付いた手裏剣が悪役の前に飛んできて、鼓の音が聞えて来る。連れて歩いているのか?。そして桃太郎はその音にあわせて、まず舞う。そこでようやく悪役が「何やつ?」と聞き返す。「桃から生まれた桃太郎」と答えて、般若の面を外す。ここまで、悪い奴らは彼に斬りかかってはいけない。また例の決め台詞、「一つ、人の世の生き血をすすり」、「二つ、不埒な悪行三昧」、「三つ、醜い浮き世の鬼を」、「退治てくれよ、桃太郎」と彼がそれぞれを言っている間は斬りかかってはいけない。お約束。

 後は立ち回りである。見事な太刀さばきで、ばっさばっさとなぎ倒す。全員を斬り殺すと、最後に大きく見得を切ったような深呼吸をする。投げ捨てた般若の面を拾ってこっそり帰っていく姿も、想像すれば相当怪しい。

(秀)