第771話 ■マッサージ椅子

 大型家電品店やスーパーの家電品売り場にマッサージチェアのデモ機が置いてある。座ってみたいが、休日となるとだいたい席は埋まっている。家族連れで一斉に座っていたりする。かと言ってあれを買っている人を見かけたことはない。「あ~あ」と席を立ったら、首をカクカクとやって次の売り場へと向かう。空いた席には待っていた人が慌てて座る。

 あのマッサージ椅子を家に持っている人はどれくらいだろうか?。いくら私でもこれは持っていない。私の周りにはとりあえず2名いる。出会った人それぞれに「マッサージ椅子ありますか?」と聞きまくっているわけではないが、普及率としては1%ぐらいだろうか?。例え買うことは出来ても、それを置いておくスペースがないとならない。そういう意味でもお金持ちっぽい。

 最近のマッサージ椅子はマッサージチェアと呼ばれるほど、モダンである。商品名も「アーバン(ナショナル)」だったり、カタログには人間工学なる言葉も出てくる。たまに家電コーナーで私も座ってみたりするが、揉みや叩きにどうもリアルさを感じられない。むしろ、ローリングによる背筋伸ばし機のような気がする。コース通りやってみても、肩がほぐれた感じはしない。

 かつてのマッサージ椅子は温泉などにあった。そして私はそれを銭湯で目にしていた。揉んだり叩いたりするアームが出ている。横には車のハンドルのようなハンドルが付いていて、これでアームの高さを調整する。リクライニングなどできず、無骨なまでに椅子である。これに銭湯などの場合、お金を入れる箱が付いている。当時、「10円」と書かれていた。

 今風のマッサージチェアよりもこのマッサージ椅子のアームでグリグリとやられた方が肩こりには効きそうな気がする。リサイクルショップなどで探し出せれば、小遣い程度の金額で買うことは出来るだろう。しかし、あいにくマッサージ椅子を置く場所の余裕などない貧乏住まいのため、それすら叶わない。妻の実家には昔あったらしい。

(秀)