第774話 ■プロ野球の落日

 昨晩から、日本サッカーの対ロシア戦での勝利で湧き上がっている。稲本、すごい。あの稲本の位置にいたら、誰でもゴールできたかのようにも思えるが、あのタイミングであの位置にいることが既にすばらしい。しかも慌てず、右上隅を狙って蹴り出しているシーンは何回見てもすがすがしい。しかし今回の勝利は彼がインタビューで話していた通り、チーム全体の勝利と言うべきだろう。稲本にパスを送った柳沢の判断もすばらしい。普通ならFWとしてあの位置からならシュートを打っていたに違いない。しかし、パスをしてでもチームへの勝利を考えるところが柳沢らしい。そして、後半のロシアの攻撃をかわし続けたディフェンスの活躍も賞賛に値する。ゲーム結果だけでなく、その内容も良かった。

 あの勝利の瞬間、私はプロ野球の衰退を強く予感した。ワールドカップ開催にあわせて4日間もゲームを休んだり、昨日は日曜日でありながら、客が入らないことを理由にゲームを休んだりすることもそうだが、長期的に見てもプロ野球衰退が始まっていることを関係者は強く意識しなければならない。レプリカのユニフォームを着て、スタンドで応援している場合じゃないぞ、清原(これがまた似合っていない)。

 長期的とは、10年、20年後のことである。今時の男の子たちの好きなスポーツはダントツでサッカーである。かつて我々の世代やJリーグが始まる前は野球が圧倒的だった。プロ野球の選手というのはアイドル歌手のように素人がある日突然、オーディションなりでスターになるのとは違う。彼らは少年時代からずっと野球に汗し、その結果現在の地位を築いている。

 巷ではサッカー少年が増え、野球少年が大幅に減ってしまったわけだ。しかも身体能力に優れた、かつては野球を好んだであろう少年たちがサッカーに興じ、プロやワールドカップ代表を目指している。今のようなサッカー人気が一時的なものであれ、彼らは熱心にサッカーを練習することだろう。そしてこの傾向は加速度がつき、ますます強化される。

 一方の野球少年は今後も大きくその数を減らす。まず高校野球のレベルが全体的に下がって面白くなくなる。そして、自ずとプロ野球のレベルも下がってしまう。単に今だけ客が入らない、視聴率が取れない、サッカーが終われば人気は戻る、なんて考えでは、ますますプロ野球は衰退の一途を辿るしかない。有力選手は大リーグへ、残った選手はカスばかり。そんな日が10年後にはやってくるかもしれない。

(秀)