第773話 ■「週刊○○」への疑問

 世の中に週刊誌の類は数多くあるが、ある決まったテーマを掘り下げて、シリーズを揃えてもらおうという類のものがある。例えばその一つに「デアゴスティーニ」という出版社がある。馴染みのない人も、その出版物のタイトルぐらいは知っているだろう。新しい出版物が出来る度にテレビCMを盛んに流しているから。「週刊ビジュアル日本の歴史」、「週刊源氏物語」、などなど、などなど。売り出した当初は書店の入り口やレジ付近に宣伝用のポップスタンドとともに平積みにされている。

 手に取ってペラペと軽くページをめくってみる。絵や写真をふんだんに使い、豪華な社会科資料集のようなテイストになっている。この出版社の場合、初回配本分は1号、2号の合併で、いつもの倍のボリュームでありながら、いつもの半額ぐらいというキャンペーン価格で客を引きつけようとする事が多い。その一週間には盛んにテレビCMも流している。

 そのうち次の号が出てくる。平積みの勢いは衰えるが、初回分も横に並んでいる。専用バインダーなんてのも並んでいる。今度はぐっと薄くなった感じがして、しかも値段は前回に比べると割高感がある。初回分は力を入れて作るので出来も非常にすばらしい。「このままコレクションしようかな?」という気になったりするが、次の号を見てややその気持ちが萎える。

 もう一つ同じようなシリーズ化を行う週刊刊行物に、「週刊デル・プラドコレクション(扶桑社)」というのがある。これは車や飛行機の模型が付いた週刊雑誌である(「デアゴスティーニ」もバイクのダイキャストモデルが付いたものを出している)。発行部数がどれほどのものかは分からないが、コレクションを楽しむような趣味の分野に対するコレクションを目的とした刊行物と狙いがマーケティングとしては確かに面白い。

 ところがこのプラドコレクションに戦国武将のフィギュア付きの「戦国覇王」シリーズが登場した。大河ドラマに便乗し、初回分には前田利家のフィギュアが付いていたようだが、歴史好きとコレクターという層はあまりダブらないような気がする。おまけに高い。現にこのシリーズはかつて一度5回で休刊(事実上の廃刊)になったことがある

 いつまで続くか分からないものを買いつづけるのは結構疲れる。読んで捨ててしまう週刊誌とは違う。コレクションすることが目的になってしまうようなコンセプトの週刊刊行物なのだから。読んで楽しむことよりもコレクションを欠かさないために買い続けるとなると、もはや苦痛となる。出版された当初はテレビCMや書店の平積みで華々しいが、次第に店に並ばなくなって、書店で予約しないと買えなくなると世間的にはそのシリーズが続いているのか、完結したのか、はたまた途中で止めてしまったのかさえ分からなくなってしまう。いや、世間的にはそんなことすらも意識されなくなる。しかしそれでも次々と新シリーズを出し続けて来るところが私には不思議でならない。

(秀)