第788話 ■ピーク

 懐かしい話の回は、「ある、ある」、「そうだった、自分も」というのが正しい楽しみ方だろう。一方もし、自分には分からない、年代的なズレや地方の違いで共通点を見出せない時も、まあ、「そうだったんだ。ふ~ん」、ぐらいは楽しんでいただけるとうれしい。そして今回は「そうだった」と肯く人がおそらく誰もいないだろうレアなネタをご披露したい。

 多分、25年程前になると思う。当時、「少年ビッグコミック」(創刊時は「マンガくん」というタイトルだった)という雑誌があって、その中で「ピーク」というおもちゃの作り方が図入りで紹介されていた。そのピークが何物であるかを文字で説明するには、その外観などを説明するよりも、その作り方を説明した方が分かりやすいと思うので以下に示す。

 [用意するもの]
・ジュース、ビール等の空きアルミ缶 1つ

 [工具]
・缶切り
・はさみ(アルミ缶が切れるもの

 [作り方]
1.アルミ缶の飲み口部分を缶切りで丸く切り落とす。
  切り口のギザギザが大切なため、この切り口はそのまま。
2.アルミ缶を上(飲み口の方)から10センチくらいのところで切断する。
3.切断した上部分側の下の部分に1センチ幅ぐらいの等間隔で、
  高さ1センチほどの切り込みを円周全体に入れる。
4.3.で作った切り込みを缶の内側にきちんと折り曲げる。

 以上でできあがり。できたこのピークは投げて遊ぶ。飲み口だった方が前である。手に持ち、上からボールを投げるような要領でだが、出来るだけ前方に平行に突き出すような形で、右(左利きの人は左)に回転を掛けながら放り出す。うまく回転が加えられるようになると、数十メートル飛ぶと、その本には紹介されていた。

 当時はまだアルミ缶が珍しく、キリンレモンと三矢サイダー、しかも250cc入りの細い缶ぐらいしかなかった。早速、2、3個作って学校に持って行ったが、案の定流行らなかった。あいざき進也が「ピーク」という新曲に絡めて、このピークのブームを仕掛けようとしているとその本では紹介されたが、そのことはもちろん、ピーク自身も世間には受入れられなかった。既にあいざき進也もピークを過ぎた後だったしね。

(秀)